最初に確かめる「親がそばにいるか」
抱っこのお手伝いと一口にいっても、親がすぐ隣で荷物をまとめている数分間の抱っこと、親がその場を離れて子どもを見ている時間とでは、引き受ける側の責任がまったく違います。何かあったときに親がすぐ対応できるかどうかが、いちばん大きな分かれ目です。
話がまとまりかけてから「実は少し外したい」と言われることもあります。最初のやりとりの段階で、親がずっと同じ場所にいるのかを確かめ、自分が引き受けられる形をはっきり伝えておきましょう。
| 項目 | 親がそばにいる短時間のお手伝い | 親が離れる預かり |
|---|---|---|
| 何かあったとき | 親がすぐに対応できる | 引き受けた人が最初に対応する |
| 事前に確認すること | 月齢、抱き方、戻し方、時間と場所 | 左に加えて、緊急時の連絡先、持病やアレルギー、迎えの時刻など |
| 必要になりうる準備 | 当日の段取りの共有 | 研修や講習、保険、場合によっては制度上の手続き |
| 始めやすさ | 初めての人でも始めやすい | 経験や体制が整ってから考えたい |
「預かり」になりそうなときは
親が離れて子どもを見る活動は、形によっては制度上の手続きが関係することがあります。国は、子どもの預かりサービスを仲介するサイトについてガイドラインを示しており、ベビーシッターなどとして子どもを預かる人には、児童福祉法にもとづく届出が関係する場合があります。
どのような場合に届出などが必要になるかは、活動の形によって変わります。個人で継続して子どもを預かることを考えているときは、お住まいの自治体の担当窓口に確認してください。
初めてのお手伝いは、親がすぐそばにいる短い時間のものから始めると、お互いに状況を確かめながら進められます。
引き受ける前に親に聞いておきたいこと
初めて会う赤ちゃんのことは、親に聞かなければ分かりません。遠慮して聞かずにいると、当日になって「その抱き方は苦手なんです」「実は食べものにアレルギーがあって」と慌てることになります。聞くことは失礼ではなく、赤ちゃんを大事に扱うための準備です。
赤ちゃんについて
- 月齢と、首すわりの前後など抱っこで気をつけること
- 親がふだんしている抱き方と、嫌がる抱き方
- 人見知りや、知らない人に抱かれたときの様子
- 泣いたときにしてほしいこと(すぐ親に戻す、など)
- 食べもの・飲みもの・おもちゃを渡してよいか(基本は渡さない)
- 抱っこひもを使うか、使う場合は誰のものを使うか
当日の段取りについて
- 日時と、抱っこをする時間の長さ
- 場所(人の目がある公共の場所か、座れる場所があるか)
- そのあいだ親がどこで何をしているか
- 途中でやめたくなったときの合図
- 遅れる・行けなくなるときの連絡方法
「お子さんは何か月ですか。抱っこで気をつけてほしいことがあれば教えてください」
「ふだんはどんなふうに抱っこしていますか。同じようにしたいので、当日やって見せてもらえると助かります」
「泣いてしまったら、すぐにお返ししてもいいですか」
「そのあいだ、〇〇さんはすぐ近くにいらっしゃる予定で合っていますか」
答えにくそうな質問があれば、無理に聞き出す必要はありません。ただ、時間・場所・親の居場所・泣いたときの対応の4つがあいまいなままなら、引き受けるのは見送るほうが安心です。
抱っこで気をつけたい基本
ここでは、こども家庭庁や消費者庁が呼びかけている内容のうち、お手伝いの場面に関わるものを紹介します。抱き方の細かなコツは赤ちゃんによって違うため、親のやり方に合わせるのが基本です。体調や発達について気になることがあっても、判断は親とかかりつけの医師にゆだねましょう。
泣きやまなくても、揺さぶらない
こども家庭庁は、赤ちゃんの頭が前後に激しく揺さぶられる状態は危険だとして、泣きやませるために激しく揺さぶったり、口をふさいだりしないよう呼びかけています。
赤ちゃんは泣くものです。泣きやまないのは抱っこが下手だからとは限りません。お手伝いの場面では、あやし続けるより、落ち着いて親に戻すことを優先しましょう。
抱っこひもを使うとき
消費者庁は、抱っこひもからの転落や窒息に注意するよう呼びかけています。お手伝いで抱っこひもを使う場合も、次の点を意識してください。
- 物を拾うなどで前にかがむときは、子どもを手で支える
- 抱っこをするときや降ろすときは、低い姿勢で行う
- バックルの留め具、ベルトのゆるみ、子どもの位置や姿勢を確かめる
- 顔や口元がふさがっていないか、苦しそうでないかをこまめに見る
使い慣れない抱っこひもは、装着に手間取りやすいものです。不安があれば、抱っこひもは使わずに腕で抱っこし、短い時間にとどめるという選択もあります。
眠ってしまったとき
こども家庭庁は、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げるポイントのひとつとして、1歳になるまでは寝かせるときにあおむけに寝かせることを挙げています。
お手伝いの途中で赤ちゃんが眠ったら、自分の判断でどこかに寝かせるのではなく、親に声をかけて戻しましょう。
赤ちゃんの様子がいつもと違う、ぐったりしているなど緊急と感じたときは、すぐに親に知らせ、ためらわず119番に通報してください。
引き受けるか迷ったときの判断
「頼まれたから断りにくい」と感じる人は少なくありません。けれども、無理をして引き受けて途中で腕がつらくなれば、赤ちゃんにとっても危険です。迷ったら、次の表で自分の状況を照らし合わせてみてください。
| 状況 | 引き受けやすい | 条件を変えるか、見送りたい |
|---|---|---|
| 親の居場所 | すぐ隣にいる | 途中で離れる予定がある、はっきりしない |
| 時間 | 短い時間で、終わりが決まっている | 終わりの時刻が決まっていない |
| 場所 | 人の目があり、座れる場所もある | 人けがない、足元が悪い、混雑がひどい |
| 自分の体 | 体調がよく、腕や腰に不安がない | かぜぎみ、腰痛がある、荷物で手がふさがる |
| 赤ちゃんの情報 | 月齢や気をつけることを聞けている | 聞いても分からないことが多い |
体調と体力の見きわめ
赤ちゃんは思ったより重く、同じ姿勢で抱き続けると腕や腰に負担がかかります。自分がかぜぎみのとき、せきが出ているときは、赤ちゃんとの距離が近いお手伝いは控えましょう。その日の体調で判断を変えてかまいません。
時間と場所の見きわめ
初めての相手とは、人の目があり、何かあれば周りに助けを求められる場所を選びます。時間は「〇分まで」と終わりを決めておくと、お互いに無理をしにくくなります。長さを決めずに始めると、やめどきを言い出しにくくなりがちです。
断る・条件を変えるときの伝え方
断ることは、相手を否定することではありません。理由を短く伝え、できる範囲があれば代わりの形を示すと、相手も次の手を考えやすくなります。長い言い訳や謝りすぎは、かえって相手に気をつかわせます。
「お声がけありがとうございます。今日は腰に不安があって、抱っこは控えさせてください。荷物を持つことならできます」
「そばで見ていていただける形なら、10分ほどお手伝いできます。離れる場合は、今回は見送らせてください」
「その日は予定が読めないので、確実にうかがえる日にあらためて相談させてください」
当日、途中でやめたくなったとき
抱っこを始めてから「腕がつらい」「赤ちゃんが嫌がっている」と感じたら、我慢せずに親に戻します。事前に「つらくなったらすぐお返しします」と伝えておけば、途中でやめることを相手も自然に受け止められます。
「少し泣きはじめたので、いったんお返ししますね」
「腕が疲れてきたので、ここで交代させてください」
引き受けた後に行けなくなったとき
体調不良などで行けなくなったら、分かった時点ですぐに連絡します。親は代わりの手段を考える必要があるため、「当日の朝に様子を見て」より、早めに伝えるほうが相手の助けになります。
写真・連絡先・お金の線引き
抱っこそのもののほかにも、事前に決めておくと気まずくなりにくいことがあります。とくに子どもの写真や個人情報は、よかれと思ってしたことが親の負担になることがあります。
- 子どもの写真は撮らない。撮るなら親に先に聞き、同意がなければ撮らない
- 撮った写真をSNSなどに公開しない
- 子どもの名前や住まい、通っている園などを人に話さない
- 個人の連絡先の交換は、無理に求めない
- お礼や謝礼の話は、あいまいにせず事前に確かめる
写真を頼まれた・撮りたいとき
親から「記念に一枚」と頼まれて、親のスマートフォンで撮る場合もあります。自分の端末で撮る場合は、撮ってよいか、どこにも公開しないことを確認し、不要になったら削除するなど、相手が安心できる扱いを心がけましょう。
個人の連絡先を聞かれたとき
一度のお手伝いで個人の電話番号やSNSを交換する必要はありません。活動の場や団体を通して知り合った場合は、その場のルールに沿った連絡方法を使うほうが、お互いを守ることにつながります。
抱っこのお手伝いができる場を探す
知り合いの子育てを手伝うほかに、地域の子育てひろばのイベントや、社会福祉協議会のボランティアセンターで紹介される活動など、子育て家庭に関わる場はいくつかあります。研修や相談できる担当者がいる場から始めると、分からないことを聞きながら経験を積めます。
だっこのわも、親がそばにいる短時間のお手伝いを中心に、抱っこを手伝ってほしい親と地域の人をつなぐアプリとして公開の準備を進めています。サポーターは応募の前に運営の本人確認を受ける流れで、いまは実際の依頼には使えません。
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子育ての経験がなくても、抱っこのお手伝いはできますか。
親がすぐそばにいる短い時間のお手伝いであれば、経験の有無より、親のやり方を聞いてそれに合わせる姿勢が大切です。不安があれば、最初は荷物持ちなど抱っこ以外のお手伝いから始める方法もあります。
首がすわる前の赤ちゃんでも、抱っこを代わってよいですか。
月齢によって気をつけることが変わるため、抱き方は親に聞き、目の前でやって見せてもらうと安心です。自信が持てないときは、無理に引き受けず、別のお手伝いを申し出てもかまいません。
赤ちゃんが泣きやまないときは、どうすればいいですか。
親がそばにいるお手伝いなら、あやし続けるより親に戻すのが基本です。こども家庭庁は、泣きやませるために激しく揺さぶらないよう呼びかけています。
親から「少しだけ離れてもいいですか」と言われたら。
事前の約束が「親がそばにいる」形なら、その場で断ってかまいません。親が離れて子どもを見る預かりは確認することが大きく変わるため、あらためて相談するか、見送るのが安心です。
お礼やお金を受け取ってもいいですか。
活動の場ごとに決まりが違うため、団体を通したお手伝いならその決まりに従います。個人の間で決める場合も、当日になって困らないよう、事前に話して合意しておきましょう。
まとめ
- 最初に、親がそばにいるお手伝いか、親が離れる預かりかを確かめる
- 月齢、抱き方、泣いたときの戻し方、時間と場所、親の居場所を事前にすり合わせる
- 激しく揺さぶらない、抱っこひもで前かがみになるときは手で支えるなど、公的機関が呼びかける基本を守る
- 体調や条件に不安があれば、理由を短く伝えて断るか条件を変える
- 写真や個人情報は、親の同意なく撮らない・公開しない



